伊豆ドイツ年趣意書
特定非営利活動法人国際コミュニケーション研究所
専務理事 木藤冬樹
趣 意 書 T
「日・独の自然保護運動の相違」「Forstwirtschaft or Waldwirtshaft」
――森を破壊してきた文明から森を創造する、文明の転換点を迎えている。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(生存権「日本国憲法」第25条)の規定には、遺憾ながら「健康で文化的な生活を営む」際の森林のもつ機能が果たしている役割が自覚されていなかった。これは、「耕す民」(日本)と「森の民」(ドイツ)との国民性の違いの故かも知れない。
「Waldwirtschaft und Umwelt Waldgesinnung vor K.ハーゼル」
「森に対する心のもち方」
「森に対する振舞い方」
「森林家精神」
冷戦構造崩壊後、1990年代に入り、米国資本主義が支配を目指して動き始め、市場経済が情報通信革命を通じて国際的に浸透しつつある動向、すなわち地球規模の大きなうねりをいう。
しかし、グローバル化は、新自由主義モデル(機会平等・能力主義)を生み、環境破壊や深刻な結果不平等をもたらし、ゲゼルシャフトの崩壊の危険をはらんでいる。
【ドイツの森林事情】
ドイツの森は美しく、豊かで、壮大で、訪問者に対し、時には安らぎを、また明日への希望を与え、そこには「郷愁」さえ感じさせる。
その規模は、世界の公園や庭園の規模を凌いでいる。日本の明治神宮の杜やフランスのある宮殿の杜は、設計された人口の森だが、そのことを知る人は少ない。ドイツの地勢(緯度)はほぼ日本の北海道と同じ冷温帯から亜寒帯に属しているので、その林相は北海道のそれに近い。1997年の統計では、その林相は、針葉樹9割以上の森林が44%、広葉樹9割以上が13%、それ以外が43%となっている。・・・自然を守りつつ適切に景観を育てあげてきた成果であろう。
「Schwarzwald(シュヴァ゙ルツヴァ゙ルト)」・・・[モミ、トウヒの針葉樹が黒く見えることから「黒い森」といわれる]・・・の針葉樹林が良く人手をかけ、深く、閑静でたくまざる幽玄な趣を演出していることにいたく心を打たれる。またこの森の姿が20世紀までの人類の叡智によって守り、築きあげられてきた到達点だといえる。
ところで、第二次世界大戦の戦中戦後、半世紀間、日本で最もよく読まれてきた外国文学の作家はドイツの詩人・小説家ヘルマン・ヘッセである。ヘッセHermann Hesse(1877〜1962)の文学は、みずみずしい自然への情感に満ち、こまやかである。シュヴァルツヴァルトの森の木々、梢を過ぎるさわやかな風など自然環境への愛と畏敬。その世界は単なる光景や景色への讃歌ではなく、創造の世界、主体への深い連帯感、自然への畏敬である。
リクリエイション林や針葉樹の保育、蓄積中心に林業を営んできた林政から、自然の生態系に配慮する環境問題を視野に入れ、現在の林相を自然の姿に近いそれに変えようとする政策転換が求められている。
蓄積された森林を有効に活用し、自然と人間が共生できる条件を整えるための官民あげた地球規模の努力が望まれる。
自然を畏れ、敬い、親しみ、その恵みに感謝する心は、古今東西を問わず人間に共通している。・・・人間と自然とのあわい(間)にはその心を大切にした「森林文化」を育む「アニミズム」のような思いがあった。
「技術領域の森林文化」=A , と「芸術領域の森林文化」=B ,との関係は・・・
A=蒸発させずに利用を続ける技術上の智恵や工夫の集積としての形成
B=彫刻、音楽
A×B=Hospitality
A÷B=Wellness
A+B=Brightness
人間は森の木から、楽器をつくり、音楽を奏でた。
自然と人間の共生のための、エコロジーとエコノミーの調和(ハーモニー)とは、このような、古代からの営みに始まる。ベートーベンはウイーンの森で、晩年の精神的不安の克服をこの森の安らぎに求めた。
ロマン・ロランは、「ベートーベンは自然の雫をつかんだ。かれは自然の力だ。その元素的なひとつの精力が全自然を相手にたたかう光景はいかにもホメロス的壮大さを感じさせる」。彼の叙事詩「イリアス」と「オデュッセイア」の中の神々や英雄の世界を見るようだ・・・。
優れた、美しい音楽の世界は、世の東西を問わず、人々にとって普遍な価値を持っている。それは、自然のもつ豊かで、普遍的な価値に育まれて、いずれの国の人々も、自然を敬い、畏れ、それに、親しみ、その恵みに感謝する心をもっている。だから、人々はその心を奏でる美しい音楽に感謝するのであろう・・・。森、川、海、湖沼、風雨、霧、雪など四季ごとに変化拡大し、自然がわれわれの感性に伝えるメッセージを、彼らの創作への啓示として受け止めた人たちである。
【森林浴と健康】
太古から森林は動植物を育み、長い間、人間と共生してきたが、20世紀末になって、乱獲による土壌・環境破壊、生態系の変化に加え、酸性雨による森林の枯渇などが世界各地で発生し、深刻化している。
ドイツにおいては、「森の民」として、森林の重要性を認識しその保全につとめてきた。その意義について考えてみる。
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